2018-01-16から1日間の記事一覧

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健二はそっと、赤ん坊を抱き上げる。暗くてわかりづらいが、眼は宝石のようなクリアブルーなのだろう。 肌はモチモチと桃を連想させ、血色の良い唇からは涎が垂れている。少し驚いたように部屋を見回したかと思うと間をおいて、部屋中を突き刺すような泣き声…

8

ごそり。ごとん。 麻袋が落ち、ヒンヤリとした床に転がった。健二が過去から現実に引き戻された瞬間だ。 転がったものを片手で乱暴に持ち上げると、ギュッと縛られた口を開き、中を覗く。 薄い、金色の髪がオマケのように被さっている八ヶ月の白人の赤ん坊…

7

眼の色というのは、これまでに全く興味がなかった。ただ、これだけ情報を集める力があるのであれば、たった今思いついた事だって予測できるのではないだろうか。なんて意味のない遊びだった。 セールスマンは健二のなんとなくの悪戯の意味がわかったようで、…

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健二は子供を犯したい訳ではない。そんな性癖は無いしそれに値する人間を軽蔑さえしている。それに拷問したい訳でも無かった。 ただ。子供を殺してみたい。 紙切れに記された八人の子供達は、決して誰にも漏らさず、健二の中だけに大切に隠しておいた嗜好そ…

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二十年程前であれば美しさに感動さえしただろう、少し古くなっているが立派な建物の十四階にレインはある。他の階は企業のオフィスが名を寄せているのに、その内のワンフロアがまさかバーである事とは誰も思いつかないであろう。 案内板に名も無く、一階から…

4

四日後、 健二は目を覚ますとコーヒーを入れ、郵便受けから五つの新聞を取り出す。 テーブルの上にそっと並べると朝食の準備を進め、てきぱきとバランス良く並べた後、新聞に目を通しながらベーコン、トースト、目玉焼きの順に平らげた。 食器はそのまま、テ…

3

一年ほど前の事だった。 滑舌が良く小麦色に焼けた肌、スーツを着こなす姿は健二がワイドショーで見た、正義感の強い司会者に今思えば、良く似ていた。 マスターに大きな歯を見せてニコニコと笑い、ウイスキーを頼むその目はバーカウンターの奥のライトの輝…

2.

頭の半分は過去をさぐりながら、 ベッドに腰掛けたまま辺りを見回し、小さな白い灰皿の横のリモコンを手に取る。健二の部屋の、倍ほどもあるテレビをつけると、まずその眩しさに目を逸らしたくなる。 慣れた手つきで明るさ設定を調節し、ぼんやりと眺めると…

1 許されない夢

(テレビの裏、ベッドの下、それと...) そこに入ると間もなく、何処に間接照明があるか探す。 彼は、それぞれが放つ淡い光が幼い頃から好きで、感情のない顔で見渡すが、内心は高揚し、瞳孔は広がっていた。隠された光を全て確認すると、次は部屋全体に目…