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二人だけの部屋で何故か周囲をチラチラと伺うと、どもりながら話を始める。片目は緊張から、豆粒大程になり、額が光っている。
明らかに異常な様子を感じた茂は、相槌の速度を緩めると、嘘を付いた男から出たどよん、とした気を逃すように常に口角を上げて聞く。
ボソボソと話し終えると沈黙が流れた。まるで悪戯が見つかり大人から罪状を待つ少年だ。
「君は、潜在意識の中で子供を守りたいと思っているんじゃないのかなぁ」
「違います。僕はずっと、殺したいと思っていたんです。それだけを追い求めてきたし、そうだ、きっと殺してしまえば夢が叶ってしまう。だから殺せなかったんだ。とにかく違うんです。」
「そうかなぁ。でもね、君が見た夢の中では、子供と遊んでいたんだろ?
それに、本当に殺したいのなら嘘を付く必要なんてなかったはずじゃないのかな。うーん、どっちにしても、君の好きにするがいいよ。
慌てないで。ね。
あ、でもーー。」
潰れた様な目が茂に向けられる。
「その"サービス"期限は無いのかな。まだ時間、あるのかな」
(そうだ、言われてみれば…)
青年の契約条件では聞いた記憶が無い。そしてもし、期限が迫っているとすればだ。
(殺さなければならない。)
普段なら誰も気にも止めないような、茂の小さな言葉が健二の中の大きな歯車を回すことに成功したようだ。
(やり遂げよう。ちゃんと、殺すんだ)
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