1 許されない夢
(テレビの裏、ベッドの下、それと...)
そこに入ると間もなく、何処に間接照明があるか探す。
彼は、それぞれが放つ淡い光が幼い頃から好きで、感情のない顔で見渡すが、内心は高揚し、瞳孔は広がっていた。隠された光を全て確認すると、次は部屋全体に目を向ける。
皺一つ無くメイクされ、いくつかの大きな枕が並べられたキングサイズのベッド、広い空間に見合う60型ほどあるテレビ。光沢のある木目調のテーブル。
大きな革のソファーには、両手で包み込める程の麻袋が置いてあり、僅かに動いている。その部屋の家具は殆どがダークブラウン、ブラック、ホワイトで構成され、照明が当たると優しく光り、とても落ち着いていられる。
(60㎡か…。やっぱり広いな。このホテルはベッドスローは無いのか。あれも高級感があって好きなんだけどなぁ)
ソファーに乗せられたものがごそり、とまた動く。
上着を脱ぎ鞄と同時に手放すと、動くものには目も向けず、浴室やトイレを見回した後、ベッドに腰掛ける。
(欽堂健二、34歳)
心の中で唱える
(やっとここまできた…)
瞳孔がさらに広がり、暖色が映り込む。
手は少しだけ震えたが、煙草に火をつけ、素早く吸い込み、ゆっくりと吐く。
ごそり。
健二にはまだ中身を出す勇気が持てない。まさか日本で叶える事ができるなんて 。
染み込んで消えかけのキッカケを。その願いの発端を掬い出そうと彼はもう一度ライターを握った。
(俺はなんで子供を殺したいと思ったんだっけな 。)
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