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四日後、
健二は目を覚ますとコーヒーを入れ、郵便受けから五つの新聞を取り出す。
テーブルの上にそっと並べると朝食の準備を進め、てきぱきとバランス良く並べた後、新聞に目を通しながらベーコン、トースト、目玉焼きの順に平らげた。
食器はそのまま、テレビをつける。
3LDKのタワーマンションの一室にある健二の部屋はがらんとしている。必要最低限はおろか、炊飯器、電子レンジも無く、代わりに健二が用意したものは渋みがかった大きなソファ、重量感のあるガラステーブル、鏡面仕上げの壁一面ほどもあるテレビ台などの家具であった。
リビング横の部屋にはパソコンが二台と、モニターが7台。デスクの上に並べられ、健二がチェアに腰かけると、まるで飛行機のコックピットのようだ。
このコックピットが健二の職場であり、様々な資金源となっているのだが、部屋のどこにもコレクションや、高級時計などは見当たらなく、クローゼットの中にも同じ服が十着ずつ。季節に合わせて四十着並んでいるだけで、娯楽というものが全く無い。
唯一の健二の癒しとなるのは、今年八歳になるトラ柄の猫だった。ある日の夜中、煙草を買いにコンビニへ行く途中で段ボールに入った子猫を見つけ、そのまま連れて帰ってきたのだった。
健二はその猫にクラウドと名付け、家族のように大切に扱っていた。
すり寄ってきたクラウドに餌を与え、暫くニュースを見た後、身支度を済ませ家を出る。
勿論、向かうのはあの男の待つレインというバーだ。用意した7560万は、使い古したボストンバッグの中に丁寧に積まれていた。