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十二月のある日。厚手で紺色のコートに身を包んだ華奢な女性はここ三日間同じデパート内のコーヒーショップへと訪れる。

選ぶものも三日間同じで、一円玉サイズのカラフルなグミがぎっしり詰まったパックを五つ。

誰がみても海外製品だとわかる、毒々しい色をしたそれは、全てキリンの形をしていた。

 

 

早足で帰ると、笑顔で待つボザボサ髮の男へそれを渡した。彼から"雌雄眼"の話を聞いてから、もうすでに二ヶ月。

 

 

「先生、次の方はいつ来られるんですか?この前話していたシユーガンの人。」

 

 

「うぅん…」

 

一ヶ月前にこの会話をしたっきり、音沙汰が無い。唸った当人も宛がないようで、退屈そうな美穂を察してか、何故か翌日色とりどりのコロコロとしたハムスターが四匹、美穂のデスクに並べられていた。

二匹ずつピンクとブルーのクリアなケースに入れられたハムスターは、喧嘩することも無く重なってぐっすりと眠る。

 

ハムスターなんて欲しがる年齢じゃないと思いつつも、その日から仕事を半分の時間で済ませると、彼等を飽きることなく見つめていた。

 

四匹には美穂がわかるようで、彼女がおやつをあげたり、散歩させようとすると決まって起きて入り口まで駆けてくる。

 

これなら誰も来なくてもいいかな。と思うほど夢中になっていたのだった。

 

 

そのまま年が明け、一月の中頃。ようやく新しい先生の"お気に入り"が二人を訪れる。

 

 

 

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