2.

 

頭の半分は過去をさぐりながら、 

ベッドに腰掛けたまま辺りを見回し、小さな白い灰皿の横のリモコンを手に取る。健二の部屋の、倍ほどもあるテレビをつけると、まずその眩しさに目を逸らしたくなる。

慣れた手つきで明るさ設定を調節し、ぼんやりと眺めると、時間は15時28分。

殆どのチャンネルのワイドショーは、右上に黒と赤で強調された文字で、凶悪‼︎や、卑劣。と映し出されている。

 

 

その内容はどれも同じ事件で、一週間ほど前、3人の幼児を誘拐、強姦し死体をその家族の元へ宅配便で送った。というものだった。

 

 彼は現実に戻り番組を観ると、ぴったりとした紺色のスーツを纏い、締まった体で、よく日焼けをした気の強そうな男がいかにも苛々した様子で口を開ける。

「まさか被害者家族と顔見知りだったなんて、、ましてやその亡骸を送りつけるなんて信じられないです!!」

 

ごそり。

 

「子供をずっと前から殺したかった、殺して自分も死ぬつもりだった。なんて、死ぬのなら誰にも迷惑をかけずに死ねばいいと僕は思いますけどね!」

 

 

三秒程テレビスタジオが静かになり、隣で聞いていた小動物のような静かなアナウンサーが急ぎ気味に口を開く。

「今後の警察の捜査により、詳しい情報が入り次第お知らせいたします」

 

 

ぼんやりと照らされる部屋で、別のチャンネルを見ると、太陽を真っ直ぐに見つめたような笑顔の恰幅の良い犯人の高校生時代の写真や、別人のように痩せた逮捕時の青白い顔、その男の近所に住む住人の話。

そして被害者の家族のインタビューが始まるが、嗚咽と激しい怒りで言葉は出ないようだ。

許せない。どうして。帰ってこない。

断片的に聞き取ることが出来たのはそれだけだった。

 

(どういう家庭で育ったんだろう。俺の様に母が居なかったのだろうか。父は。兄弟は。いじめられて居たのか。俺もこいつと一緒なのか。)

いくつか自問自答したが、すぐに興味がなくなり麻袋に目を向けようとした頃、事件の報道は嗚咽を映すものから、スタジオに切り替わっていた。

 

 

ごそり